アメリカ駐在30年 Ted Imai のニューヨーク Almanac|Mother's Day 母の日

【New York Almanac Vol. 02】Mother’s Day 母の日

アメリカの母の日

五月第二日曜日は国民の祝日、「母の日」である。

ニューヨークでも大きな祝日で実家や生家に帰る人が多い。
またレストランなどを予約して家族が一同に会し、母親に贈り物をしたりする。
友人の一人は毎年この日に合わせてボストン郊外に住む母親を片道五時間もかけて車で迎えに行く。
自宅に兄弟姉妹、時には友人を招いて小さなパーティーを開く。ワイン・ビールをたくさん買い込む。
食事は兄弟、友人が持ち寄る。A Potluck Partyと呼ばれている。
本来は参加者が自分の得意な料理を持ち寄ってパーティーを開くのが始まりであるが、料理が偏るのを避けるために、
主催者が参加者に料理や飲み物を割り当てる場合もある。大抵のアメリカ人は家族を大切にする。

ところで、そもそもなぜ「父の日」でなく「母の日」か。百歩譲って「親の日」ではいけなかったのか。

起源

アメリカで「母の日」が祝日となったのはそれほど古い話ではない。
1911年頃には全米の多くの州で「母の日」が州単位で祝われていたようである。
Anna Jarvisを抜きにアメリカのMother’s Dayを語るのは不可能である。
彼女が時の大統領Woodrow Wilson に訴えて始めてこの日は国民の祝日となった。(National Holiday.)
1914年のことである。
また、彼女の母、Ann Jarvisは南北戦争(1861年―1865年)で引き裂かれた家族を元に戻すために尽力し、
母親の愛こそが世界平和のために役立つと訴え続けた平和運動家である。
その意思は娘に引き継がれ、全米的な祝日として成立した。

アメリカには母親や女性を守るために制定された祝日や法律が多い。
悪名高い禁酒法(Temperance)も男性が女性や妻を家に置き去りにしないようにと法制化されたものであるという。

現代の母の日

ところで、「母の日」の現代的意味はその日に集中した「買い物」や「セール」である。
とにかく、アメリカ人は一般に買い物好き。
しかも一度に大量に買う。
母親への贈り物を買うという大義名分の下、あらゆる商品が母親向きになるのは世の常である。
お母さんに感謝すれば花屋が儲かり、カード屋さん(Hall Markなど)が喜び、デパートは早朝開店する。
Thanksgiving Day, Christmas, Labor Day などに比肩しうるShopping Dayである。

歴史の側面から見る母の日

それでは「なぜ母の日なのか」という疑問はいまだ解決を見ていない。

米国に限って言えば、これはこの国の成り立ちとどこかでつながってはいないか。
イギリスのプロテスタントを中心とする102名の乗客、25名の乗務員を乗せてMay Flower号がPlymouth, Mass.に到着入港したのが1620年。
戦争を経てイギリスから独立したのが1776年であるから、
基本的には120名で始まった集団移民がわずか150年で一国の体裁を整えたことになる。
この150年間の事業の背骨(backbone)であったものは何か。
とりも直さず、これが「母の日」の決定要因のひとつになっているのではないかと考えるのは、あながち見当違いとは思えない。

さて、最初の英国移民自身が母国で宗教的弱者であったことは歴史の教えるところである。
「弱者を守る」ことによってこの国は独立を勝ち取ったという側面があるのではないか。
母の日は「弱者を守る」日なのだ。
この側面から切り込んでゆくと、その後のアメリカの歴史が少し明確になる。
1960年代の公民権運動、
同時発生的なFeminism、
現在的なSexual Harassmentに対する抵抗運動もすべてこの延長線上にある。

 

執筆者プロフィール

今井 卓実

株式会社エスプール
顧問 今井 卓実 

【経歴】
慶応義塾大学文学部卒業後、近鉄航空貨物株式会社(現近鉄エクスプレス)に入社する。1976年、米国法人Kintetsu World Express(U.S.A.),Inc.に出向し、以後米国に移住して、達意の英語を駆使して営業活動を行なう。1987年日本本社に帰任し、本社国際部・経営企画部に配属される。1996年、再度、近鉄エクスプレス米国本社に赴任し、総務・人事・法務担当取締役に就任する。2007年、同社を退職後、現在に至る。滞米生活30年。

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